ようこそ言いっぱなしの教室へ。
※ブログのコメント欄にいただいたコメントが全部承認待ちのままになっていることに気付いたので、今回承認いたしました。中には数か月にわたって承認待ち状態だったものもあり、大変申し訳ありません。
今回は特に書籍の検証というわけでなく、最近のついったで見かけた炎上ツイートからいくつか。
クレド会員の炎上。
NHKがAIを利用したと称するトンデモ番組をやって炎上した件について、ハフィントンポスト日本版編集長の竹下隆一郎氏がおかしなことをツイートして炎上している。
#AIに聞いてみた の批判見てると、論理の破綻とか相関関係と因果関係の混合が、許せない人がいるようだが、人間がつくる番組だなら破綻したりごちゃごちゃしてないと面白くないと思う。ロボットじゃないし。もしそれでも論理学基礎を啓蒙したいんだったら良いのですが、会話の不思議さが失われる
— 竹下隆一郎 ハフポスト編集長 (@ryuichirot) 2017年7月22日
その後撤回したようなのだが、そもそも何が言いたいのかよくわからない。「いとして、はてブを見るとみなさん「報道と面白さをごっちゃにしてるのか」のような文脈で批判していて、ああそういうことなのかと思った。
はてブのコメントにもネットにつきもののマスコミ嫌いや朝日嫌い(竹下氏は元朝日記者)が垣間見えて同意できないところがけっこうあるし、竹下氏の問題意識そのものは3割くらい同意するところもある(この文脈で発動すべきかというと、そうは思わないが)。
で、自分が思ったのは、「ああ日垣氏のクレドの人か」であった。この人は日垣氏のクレド会員だったことのある人で(今もかは分からない)、しかもけっこう活動の多い関係だったようである。なんというか、よくリテラシーが高い低いというようなことがあるけど、案外根本的なところで分かつのはこのへんの意識の問題じゃないかと思ったりする。ありていにいえば「雑学はアヤシゲなところも魅力」と言っちゃえるかどうかの問題というか。
山本弘氏、議論を放棄する。
最近日垣氏よりと学会関係のエントリばかり書いているのだが、最近元会長の山本弘氏がちょっとやばいことになっている。
山本氏がと学会とかSFとかとは別に、昔から表現規制反対の論陣を張っていたのは知っているというかむしろその点でも敬意を持ってもいたんだけども、最近そっち方面のツイートに首をかしげたくなるものが時々見られるようになった。なんというか、表現規制界隈のおかしめな人に汚染されたのかと思ってしまうような。筒井康隆がやらかしたときもビミョウな気分になったのだが、先日もっとオヨヨとしか言えない事例を目撃してしまった。
きっかけは、フェミニズム研究者の牟田和恵氏が、森奈津子氏とやりとりしていたレスにはじまる。
レスありがとうございます。「フェミニストを装ったミサンドリスト」というお答えはわかりましたが、でもどういう人がそうなのか良くわからないんですよ。フェミニストは男性社会を批判していますがそれは男性嫌悪とは違うと思いますが?それに今の社会でフェミニストを装って何の得があるんでしょう? https://t.co/Rqlzdo6lLb
— 牟田和恵 (@peureka) 2017年7月14日
これに乗っかるようにして引用ツイートしたのが山本氏である。
すごいなあ。「ジェンダー研究者」を名乗る人が、ツイッターでだいぶ前から話題になってる「まなざし村」界隈のことを何も知らないらしいよ。 https://t.co/rbeOETJ1L9
— 山本弘 (@hirorin0015) 2017年7月15日
まずこの時点でかなりヤバイ。ちなみにこのツイートにはとある「表現規制反対派」のリプライがぶらさがっているが、そのツイートは「そんなのウソだ、こいつはまなざし村メンバーを以前持ち上げてた」という内容である。つまり、森氏や山本氏の「フェミ」認知自体を牟田氏は同意していないわけで、ある意味この時点で語るに落ちているといえる。語ってるのは山本氏ではないが。
まあそれは横に置くとしても、研究分野の広さをあまりに軽視したツイートである。フェミニズム系のイギリス文学研究者のさえぼう氏のツイートでも、フェミニズムといっても広いから、という指摘がされている。
だいたい家族社会学とかセクシュアルハラスメントの研究している人がメディアのジャーゴンに詳しく無くても別におかしくないよねぇ。フェミニズムに限らず、労働とかの研究をしている人と、表現やメディアの研究をしている人は大きい学問分野が同じでも知識があんまりかぶらない。
— saebou (@Cristoforou) 2017年7月17日
また、フェミニストではないだろうが、歴史修正主義などの著書のある能川氏は、そもそもそれって重要なん?という指摘をしている。どっちかというとこっちのほうが論点としてはクリティカルかもしれない。
「まなざし村」なんてジャルゴンが可視化しているのは「フェミニズムの問題提起をなにがなんでも曲解し歪曲してやろう、とするクラスタの存在」であって、もちろんそれを研究対象とするフェミニストはいてもいいしいたほうがいいけど、誰もが意識すべき課題ではないなぁ。
— 能川元一 (@nogawam) 2017年7月17日
山本氏は「トンデモ本の世界」をはじめとする著書なりツイッターやブログなりでいろんな分野にわたってものを書いたり語ったりしているので、同じことを研究者もしていると思っているのかもしれない。しかし、そんなわけはないだろう。むしろ、一つのことを掘り下げるためには「選択と集中」を正しい意味で適用する必要だってある。そういうオタクはいっぱいいる、というか少し古いイメージだとそれこそオタクの極北!だとか思ってしまうのだが、山本氏の周りではそうでもないのだろうか。
まして、インターネット上のツイッターで出回る言論の中で、しかも侮蔑のためのスラングのように使われるフレーズで形作られる「集団」である。それが本当に集団であるかは不明だが。知らなくて当たり前、あるいは存在は知っていてもそれがいま議論の的になっているものとして挙げるに妥当だと思ってなくて当たり前でないか。
こういうズレた世界観をもとに語っておかしくなる、というのはなんのことはないいわゆる「トンデモさん」にありがちなことである。例えば、と学会メンバー(20年くらい前。今はわからない)の一人、前野昌弘氏が千代島雅氏のトンデモ科学書「ダメな日本のおかしな科学者たち」の書評の中でタイムマシン理論で有名なソーン氏を日本の物理学者が批判しないのはおかしい(千代島氏はこの理論がおかしいと主張しているわけだ。その主張自体も批判されているのだが本題に関係ないので割愛)という千代島氏の主張に対してこう答えているものがある。
ところが、驚くべきことに、ソーンのタイムマシンの理論に対して堂々と公の場で反論している日本の物理学者は一人もいない! まさしく専門家としての物理学者の組織である日本物理学会は、自分の存在のすべてをかけて徹底的に反論するのが当然だと思われるにもかかわらず、(私が知っているかぎりでは)そのような話は全くない!(引用者註:ここまでは千代島氏の著書からの引用)
とまで言われなならんようなことだろうか。たいていの物理学者(素粒子、物性、原子核、宇宙線、その他タイムマシンとは何の関係もない分野が専門である人の方が圧倒的に多い)は、ソーンが何言ったか知らないか、何言ってても知ったこっちゃないと思うのだが。
また、千代島氏はホーキング理論についても同じようなロジックで日本の物理学者を非難しており、それについてもこうコメントしてある。
ついでに言うと、ホーキングの虚時間形式を使った宇宙の生成の話自体は、日本物理学会の物理学者みんなが信じているわけでもなんでもない。さっきのタイムマシンと同じで、ほとんどの人はそういう話題には無関心なのではないかと思う。
ソーンもホーキングも、その世界ではけっこうなビッグネームである(少なくとも、タイムマシンの研究者でもなんでもない自分が名前を知っている)。「まなざし村」など、そりゃあ知らない人もいるでしょうなとしか言いようがない。いうなれば、清家新一や鈴木貞吉を知らない物理学者がいるなんて!というようなところだろうか。ちなみに科学畑とかその中の物理畑の若い院生などでも、それ誰だ唐突に何をお前言ってるんだという方がおられましょうが知らなくていいです。
トンデモさんというのは思い込みが強いことが多い(と思う)ものだが、それをまんま山本氏がやらかしてしまっているというのはなんだかなあである。
以上前フリ。
いろいろと批判はしてみたけれど、ここまではまだわかるのである。つい自分の狭い世界で語ってしまうこともあるだろう。そういうのがなく、いつも「客観的」な語り口を保っているほうが不気味かもしれない。問題は、事後である。
これに対して、シュナムル氏がこういう反応ツイートをした。
「まなざし村」なんてツイッターのごく小さな界隈で使われる侮蔑的なスラングに過ぎないんだけど、それを一般的な知識として「ジェンダー研究者を名乗る人がまなざし村も知らないのかw」みたいなマウンティングを始めてしまう山本弘さんを見て、SNSのやり過ぎによる視野狭窄の恐ろしさを改めて知る
— シュナムル (@chounamoul) 2017年7月16日
だいたい自分の感想もこの通りなのだが、これに対する反論が、ひどすぎる。
失礼します。つまりあなたは、一部の人間の暴走により、フェミニズムに関する誤ったイメージが世間に広まることは、フェミニストが関心を持たなくていい些細な問題だというお考えなのですね?
— 山本弘 (@hirorin0015) 2017年7月16日
微妙に議論がすれ違えているように見えるし、フェミニズムに関する誤ったイメージが世間に広まる原因は「まなざし村」などという言葉を乱用する層のせいじゃないかとも思うので、それはそっちの「一部の暴走している人間」に言うことではないかという気がする。ともあれ元のツイートは山本氏がしているような話をしてないので、こう反論というか説明される。当たり前であろう。
書いたままの考えです。つまり、「まなざし村」なんてしょうもない内輪向けの用語をジェンダー研究者なら知っているべきだと思い込む発想は、自分の視界に入るごく狭いネットのコミュニティを相対化できないくらいにツイッターに嵌りこんだ人間でないと出来ないだろうという考えです。
— シュナムル (@chounamoul) 2017年7月17日
ここまでは、一応わかる。ここで山本氏はこんなことを言い出すのだ。
なるほど、根本的に話が通じないようですね。議論は無駄だと判断しますので、これで失礼します。
— 山本弘 (@hirorin0015) 2017年7月17日
話が通じない、というのは山本氏自身のことではないのか。
議論をしない、という選択を否定するつもりはない。ツイッターというかネットでは、議論をすることに不毛さしかない場面だって多々ある。これがそうかは分からないが。しかし、それなら黙って打ち切るとかやり方はあるわけで、自分からリプライで絡んでいった上に傍目にも変な対応というのはどうなのか。
山本さん。議論というのは最低限、相手の言っていることと言っていないことを区別できる人間がすることだと思います。
— シュナムル (@chounamoul) 2017年7月17日
さすがにシュナムル氏はこう反論、というか諭すのだが、ここでリプライの応酬は途切れている。
と学会員の中でも、山本氏はいろんなトンデモさん(だけではないけれど)相手に論争をしている場面が昔から多い人であると思う。結果、相手のトンデモ主張がよりわかりやすくなったり、新たな問題が見えやすくなったということも多い。
そういう人がこのような対応に終始してしまったというのは、どうしても「そういえばあの論争もこの論争も山本氏が引用する形で納得したんだよな。あれってどうなん?」という疑惑を引き起こしてしまう。それもずいぶん非論理的な考え方だし、まあそんなことはないと信じたいところだが、そういう意味でたいへんまずい炎上の仕方だよなと思う。
ちなみに、ツイッターのフェミ言論系オタクのアカウントの一人、デビルトラック氏は一連の流れにこう反応している。まあ、そうなるな。
「まなざし村」自体不当なレッテル貼りなのに、それを相手の足止めに使おうとして軽くいなされるって、どんだけ醜態を晒してるのかという話で。
— デビルトラックさん (@deviltruck2010) 2017年7月17日
実はだいぶ前に別のところで山本氏が「まなざし村」というフレーズを使っているところを目にしたことがあり、うーん……という気分になったのだが、ここにきて露わになってしまった感じである。
と学会といえば、こちらも退会済みだそうだが菊池誠氏も目も当てられないことになってしまっており、なんというかどうしてこうなった。
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