一昨日は俊一ちゃん、昨日は実ちゃん、今日はあなたたちね〜?

 あらら〜、唐沢俊一検証ブログの管理人氏が忙しいから、たまには私が出てきてもいいよねやめなさい。

 

 ていうか一昨日でもないし昨日でもない。それくらいには久々の更新である。それはそうとドイッチュランドもZ46も落ちないぞどうなってんの

 

 日刊ゲンダイに掲載された朝日新聞の高橋記者のインタビューが、物議をかもしていた。「だまって便所をつまらせろ」には唸らされた記憶がある。

www.nikkan-gendai.com

 しかし、エビデンスなんて知るか!などという主張をしていたら、それはかなりがっかりである。さてこれはどういうことか。 

 というわけでゲンダイのサイトに読みに行ってみた。ところがである。

 困ってしまったことに、読み進んでいってもエビデンスなんてねーよについて語っているシーンが冒頭にしか出てこない。これじゃあなんともいえない。冒頭の部分というのは、インタビューではなくゲンダイ記者による叙述部分だから、高橋氏がどこでどういう文脈で言ったのかわからないことには評価の仕様がない。インタビュー部分はまあ普通に面白いし興味深いし、そうするとさて、では何が気に食わなかったのだろうということになる。

 

 この記事の文章を見る限りだと、エビデンス云々という記述は、おそらく高橋氏が出版した著書の中にあるのだろうな、ということが推測できる。なのでそれを見れば判断つくはずだ。というか、見ないと判断がつかない。

 ところが、このインタビュー記事に腹を立てている人はツイッターのフォロワーの中に複数いるのにも関わらず、おかしいと思って著書を見てみたらこうだった、やっぱりひどかったですわ、というような話をしている人が何故か見当たらない。見当たらないのだが、何故か「これだから朝日は」と朝日叩きに励んでいる人はちらほら見かける。どうもよく分からない。だってあなた、エビデンス軽視に腹を立ててるのに、その怒りのエビデンスであるはずの著書の話がないんですぜ。何が起きているのかよく分からないとしか言いようがない。

 いや、断片的な情報の段階で怒るな、とは言わないけれども、もう少し留保する声があってもいいじゃないと思うではないか。

 まあ仕方がないので、アマゾンでぽちってみるかなーと思っていたら、当該書を手に入れた人が、著書の中での文脈を解説してくれているツイートがいくつか見つかった。

 まず、高橋氏と同じ朝日新聞所属である、丹治記者。朝日所属だから身内びいきじゃないかと思う向きもあるかもしれないが、朝日の記者ツイートは割と人によって多様性があって、丹治氏の場合、高橋氏のインタビューでのスタンスそのものについてはそこまで好意的ではなく、批判的なつぶやきをツイートしている。ちなみに専門分野はボーカロイドデジタル関係である。

  その他にも「仕方ない帝国」を購入している人からの指摘が入っている。

 

  何か政治家(大抵は自民党)が失言したらしいという話がネットを駆け巡ったあとで、「全文を読め!偏向報道だ!」と批判する人が出てきたので読んでみるとやっぱりひどかったというのはよく見かける光景なので、そういう展開をつい期待してしまうわけだが、これは日刊ゲンダイが悪いだろうとしか言いようがない。

 というわけで、リテラシーのない記者がいるというよりは読者のリテラシーを問われる事案だったわけであるが、その「読者」の反応はどのようなものだったか。

 俺が最初このインタビューについての話を見かけたのはメディア文化学が専門である津田正太郎氏のツイートだったのだが、当初の反応はこんなだった。

 

 

 くだんの記述が、そのまんまの意味なら、たしかにこの批判はあたっている。 吹き上がってるわけでもなく、慎重で丁寧な批判だと思う。

 で、その後、事情が分かったのちにはこういうツイートをしている。誠実な対応である。

 

   さらに、間違ったことを正当化しようとしている声にこう諌めてもいる。

  で、そのことを踏まえて。

 高橋氏のインタビューについて、普段エビデンスの重要性を説いて、熱心にニセ科学やニセ医療などの批判をしている人がけっこう反応していた。こういうクラスタは普段、いろんな人のおかしな主張を批判して、「なぜ誤りを正せないのか」みたいなことを言ったりもしているわけである。その活動自体は別に否定することはないのだが、どうも自分の観測範囲でのそういう人について、エビンデンス云々が早とちりであると分かった後の反応がひどいことになっている。

 まず上でもちょっと触れたけど、そもそも、くだんの文章がどこから来たのかよく分からないというのは一読していると気づくことである。これは後付けも半分あるし、自分が高橋氏のスタンスにわりと好意的なのでバイアスがかかっているところもあるのであまり大きい声で自慢できることでもないと思うのだけれど、しかし「これは記者が勝手に書いたものではないか?」「原文にもあるのでは?」と考えるのはエビデンス主義なリテラシーの働かせ方に思える。特に「イデオロギーにとらわれない」が合言葉のような人なら、気づいてもよさそうだ。

 ところがあまりそういう話がない。そのため、こんなふうに皮肉られてもいる。

  なぜか軒並み、出処のおかしさに気づいていないのである。

 でもまあ、それは難易度が高いのかもしれない。俺が気づいたのだって、上にも書いたように自分のスタンス上の理由もある。さっさと改めてしまえばいいのである。科学というのは誤りを修正して進んでいくものである。

 ところが、改めるどころか、デマであることが分かるとごにょごにょと言い訳を始めたりしているのだからどういうことなの……となってしまう。

 例えば、神田外国語大学の飯島明子氏(物理化学)は当初こういうふうに反応している。

 個人的にはもりちゃねという人も大概デマ混じりなことを言っている印象があって、仲良くしていると言う時点でガセとかデマについて語るのはやめたほうがいいと思うのだが、それは交友関係の自由として、高橋氏はエビデンスなんて知るかという記事を書いた話はしていない。「エビデンス?ねーよ、そんなもん」そのものに反応しただけなら、単にゲンダイに釣られた話ですむのだが、高橋氏はそんな記事もコラムも、書いているという話をインタビューでしていないわけで(それどころか、社説なんかではキチンと書くという話をしている)、ちゃんと読んでいるのか疑問が残る。それって科学論文なら不正行為っていいませんかね。そして、その後この記事について、何かを発言しているツイートは見当たらない。

 飯島氏はちょっと前に、演劇などの中にスルっと反原発のメッセージなどを入れるな、やるならちゃんと勉強しろ、みたいなことをつぶやいて、科学リテラシー系の人にウケているのを見たのが名前を知るきっかけだったのだが、ご自分は「スルッと」反メディアのようなつぶやきをしても平気なのだろうか

 ところでこのツイートを見ると、飯島氏は安部政権を批判する人々の外側にいると自認しているように読める。別に人の政治観をとやかくはいいたくないし言う筋合いもないのだが、あの文教政策で大学をガタガタにしている政権について何も思わない大学の先生、なんだなあ……と思ってしまう。

 

 福島の放射能デマについての批判などを熱心にしておられて、その点では頷くことも多い大森真氏は、この記事をこう評している。もともとはTVマンだったそうである。

 

  やはり、言ってもいない「報道のなかでのエビデンスを否定していた」という文脈で語っている。そんなことは言っていないし、それはよくないからオピニオンを語れるコラムでそういうところを頑張ってるというのがインタビューの中身なので、このツイートのエビデンスはどこなんだろうということになる。

 その後、特に自分の発言について訂正する気配がなく、代わりに同じく高橋氏のインタビューを論難していたモトケン氏が「読んだけどやっぱりダメだ」と主張しているツイートをRTしている。こういうの、開き直りっていいませんかね。

 開き直る前に、自分がエビデンスに基づかないで人のエビデンスをどうこう言っていることについてはどうなのだろう。もうひとつこんなのもRTしている。

   そんなことをRTしている前に、まず自分のうかつさについて何か語ることはないのかな、と思うわけだ。「福島差別」といえば、こういう後付でゴールポストをずらすような発言もけっこうあるわけだが、大森氏にとってそういう反応はどう映っていたのだろう。

 ちなみに、大森氏は福島における差別問題を語る本の共著に入っておられるとのことで。少し前にこの本は「放射能被曝の理科・社会」の続編的な存在になるんですよ、といって宣伝していたのをRTで見かけて、結構楽しみにしていたのだが、こうなるとこの人の担当箇所が大丈夫か不安になってくる。まあそれはそれ、であることを願いたいところだ。

 前回も登場した原田実氏は、こんなふうに高橋氏を批判している。

   原田氏のツイートはRTがやたらに多いので見落としていたら申し訳ないところだが、その後の情報を受けたのちのツイートらしきものは見当たらなかった。それだけならまあそういうこともあるだろうと思うのだが、「あれはデマだったらしい」ことを踏まえたツイートはRTがされていて、例えば上のハコ氏のツイートはRTがされていたりする。もしかしてなのだが、エビデンスに興味がないのだろうか。

  というRTもあったのだが、そうなるとこれは自己紹介かな?と思ってしまう。

 ついでに言うなら、別に批判出来るのはトンデモ本の世界シリーズに唐沢俊一氏が大量寄稿していることからも分かる通り。唐沢氏のガセパクリの山は今更だが、だからといってトンデモ本認定が覆る本がそうそうあるわけでもない。というか、エログロナンセンスから規制される論」なるトンデモ史観をツイートしていた原田氏がこれRTするのかー、という話でもある。筋が悪いと思うから、前回のエントリでもそういう物言いは避けたのだけどね。

 

 しかしね、ここまでは、ギリギリ仕方がない面もある、と思う。高橋氏が嫌いなのは仕方ないし、そうなるといろいろ理由をつけて自分の誤りを認めたくない(あるいは、誤りと思わない)のも分かる。にんげんだもの。ま、そういう人の「リテラシー」がどう評価されるかは別の話だけど、さっきの原田氏の話ではないけどある程度はそれはそれこれはこれ、としても良いと思う。

 ということで、真打(というか本来このエントリはこの人の話を書くつもりだったのだが、ツイートをたぐっていたら予想以上に前座が長くなった)の登場である。

 その人というのは、菊池誠氏である。高橋氏を論難するツイートをあれこれとRTしている数も他の諸氏に比べて多いのだが、しかし問題はそこではない。

 

  どこをどう考えても、エビデンスに基づかないトンデモを批判してきた人の言うこっちゃないんですが。

 菊池氏がやっていることは、流言飛語の正当化であって、思いこみさえあればどんなことをやっても問題はないという、まあニセ科学批判という観点から見たら断然許してはいけないことであるはずだ。それをニセ科学批判で一世を風靡した人が言うというのは一体どういうことなのだろう。というか、自分が今まで言ってきたことをどう思っているのだろう。放射能デマにしろ、反ワクチンにせよ、正当化するだけの思い込みがあったからこそここまで深刻化したのではないかな。

 これなら、もちろん東電や原子力発電なんてどれだけ叩かれても文句は言えないということになるはずだが。そんなのはおかしいだろう。なんてていたらくだ。

 ついでに言うと、俺も朝日と岩波は基本的に信頼に値するメディアだと思っているけれど、一方でときどきおかしい本を出していることくらいは気づいていたので、3.11を機にがっかりした、なんてそれこそ原発事故を受けて初めて「ずっとウソだった」と言ってしまう程度にはナイーブなんじゃないかと思う。このへん、どっちもどれくらい修辞的なつもりなのかよくわからないのではっきりとは言えないが。

 また、「日頃の行い」なるものにしても、どれくらいエビデンスがあるのだろうか。「プロメテウスの罠」を引き合いにだして朝日が東スポ程度、というのなら、外国人技能実習生で、酷使する側べったりの記事を平気で載せる読売や「BPO反日」の産経はどうなのか。というか、総理大臣にオススメされる読売新聞、という「日頃の行い」とはなんだろう、と思ってしまうのだが。

 いや、別に他紙がやってるからそれくらいいいじゃないかと言うのではない。朝日だけをことさらに強調する理由としての「日頃の行い」とはいったいなんなのだろうか、という話である。朝日批判は別に良いが、そこまで言うのなら普段の情報収集には「よりマシな」別の新聞なりメディアなりを使っているのだろう。「新聞は朝日に限る」という人が朝日は東スポ並みだというのなら、今は何を読んでいるのか。読売なのか。産経なのか。保守速報なのか。

 

 

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仕方ない帝国

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メディアは社会を変えるのか―メディア社会論入門

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しあわせになるための「福島差別」論

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   本題とは関係ないけど、内容とは別に「仕方ない帝国」と「しあわせになるための「福島差別」論」の表紙は好きじゃないな。個人的に。どっちも内容はまだ読んでないのでそれ以上はとやかく言わないが(上のアマゾンリンクには書影がないが、別のところで見た)。

 

江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統 (星海社新書)
 

 

 

 

 

プロメテウスの罠―明かされなかった福島原発事故の真実

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